将棋好きの方なら「奨励会」という単語を

一度は聞いたことがあると思いますが、

実際、奨励会員がどのように過ごしているのか知っていますか?

 

プロ棋士や女流棋士はAbema TVなどで一週間、

一日の過ごし方が放送されるのでご存知の方も多いでしょう。

ですが、奨励会員はどうでしょうか?

おそらくほとんどの方が知らないと思います。

 

今回は奨励会員がどのような勉強をするのか、

ここに注目してご紹介していこうと思います。

題して「奨励会員が教える奨励会員の主な勉強法」です!

それではいきましょう!

 

 

勉強法は基本的に同じだが…

 

奨励会員の勉強法はアマチュアの勉強法とほぼ同じです。

ですが、奨励会員は量より質を何よりも重視します。

例えば、詰将棋は1手詰めより20手台の方がよく解きますし、

棋譜並べもなるべくトップ棋士の棋譜を選んで並べます。

 

奨励会は最弱がアマ四段レベル、という世界です。

将棋の一手一手に繊細さが求められるだけでなく、

序盤から詰みまで読まないといけなかったり、

逆転勝ちするためにわざと悪手を指して惑わせたり、

とにかく無茶苦茶な世界なんです。(プロの世界も同じですが)

 

なのでこれを念頭に置いて、

どう勉強をしているのかを見ていただければと思います。

 

対局

 

まず対局ですが、奨励会員は誰とでも指すわけではありません。

ほとんどの奨励会員は研究会でプロ棋士や強い奨励会員と指して勉強します。

 

将棋倶楽部24や将棋ウォーズで一日に何局も指す方もいますが、

大抵お遊びか、自分の研究を試す場所になります。

(もちろん真面目に指される方もいますがかなり少数です)

奨励会は対面で指すので、

ネット将棋を主にすると本番で力を発揮できないんですよね。

 

私の場合は師匠に稽古をつけてもらうことが一番多いですね。

その次に、棋士、奨励会員合同の研究会。

そして道場で奨励会員と練習将棋。

ネット将棋は暇つぶしに指すくらいです。

 

気になるであろう研究会の持ち時間ですが、場所によってさまざまです。

練習将棋なら10秒将棋が多いですかね。

研究会になると、20分のところ、30分のところ、

1時間のところ、3時間のところ…主催者の好きな持ち時間で行います。

 

終わったら「はい次」、ではなく、

じっくり時間をかけて時には30分ほど感想戦を行います。

初手から終局まで一手一手を検討していくんです。

これが結構効果あるんですよね。

 

奨励会員はアマチュアと違って「強くなる」ということはありません。

その代わり「感覚を磨く」。これが大事になってきます。

奨励会員にもなれば、ほとんどの局面でプロと同じ手が指せるようになります。

問題は2~3つ見える候補手から最善手を選び続ける。これなんですよ。

さらに逆転を狙うために敢えて最善手を外さないといけないときもある。

この絶妙な感覚を磨くのが奨励会員にとって大事なんです。

 

私がわざわざこの場で言う必要もないかもしれませんが、

藤井聡太七段は相当な感覚の持ち主なんですよ。

 

—-誰もが藤井七段の負けを悟った次の瞬間—-

「藤井七段が勝利しました!」

 

将棋ファンならこういう光景を何度も目にしたかと思います。

これは、実は最善手を指し続けたからこうなった、わけではなく

上手く間違えるよう、誘導するような手を

意図的に指しているからこうなったんです。

もちろん、正しく指されたらあっという間に負けてしまうのですが。。。

そういうところの駆け引きが藤井七段のすごすぎるポイントですよね。

 

話が少し逸れましたが、

とにかく奨励会員は研究会で「感覚を磨く」作業を行っているということです。

ただ闇雲に指しているわけではないんですよ!

棋譜並べ

 

棋譜並べは主に『記録係』と『モバイル中継』ですね。

まず『記録係』ですが、

奨励会員は小中学生は任意、高校生以上は義務で記録をやっています。

人によって記録の頻度は違いますが、月に2~4局が平均ですね。

 

お仕事ではありますが、棋士の指し手が見れて、

さらに棋士同士の臨場感ある空気を感じることができるので

奨励会員はこの制度を有効的に活用しています。

 

ただ『記録係』は平日に行われるため学校を欠席しないといけなかったり、

長時間正座をしなければいけなかったり、記録で見れる対局が『モバイル中継』でも見れたり…

こうした背景もあって、『記録係』を積極的にやりたがる奨励会員は減りました。

 

私が奨励会に入会したころは我も我もと記録の奪い合いがあったのですが・・・(笑)

今では『記録係』の不足ゆえにAIによる記録が検討されているとか。

 

一方で『モバイル中継』ですが、はっきり言ってこれは神です!(^^)!

毎月500円払えばスマートフォン、タブレットにて

今日行われている対局から過去の数千局が見放題!

棋士、女流棋士、奨励会員は全員利用しているアプリです。

解説も載っているので初心者の方にもおすすめです!

 

と、宣伝になってしまいましたが本当にお世話になっています。

棋士別、戦法別で棋譜を見れるので自分の用途に合わせて使うことができます。

 

他にも『データベース』『名人戦速報』(両方とも略称)など

使うこともありますが、主に奨励会員が行っている棋譜並べは上記の二つです。

 

奨励会員はすでにアマチュア時代に数百局の棋譜を並べているので、

「考えながら」というよりは「感覚を思い出しながら」棋譜を並べていますね。

 

詰将棋

 

詰将棋は『詰将棋パラダイス』『詰将棋サロン』を毎月解きます。

でもそれだけだと少ないので、

個々に難解な詰将棋本を購入して解く方が多いですね。

手数は5手~29手。

 

『詰将棋パラダイス』は幼稚園コースから短期大学コースまで。

それを数日、早い人は一日で終わらせます。

『詰将棋サロン』は全問、これも数日ほどで終わらせます。

 

私は詰将棋が速く解ける方ではありませんが、

一週間程度でどちらも終わらせています。

 

一昔前は「『将棋図巧』をすべて解き終えればプロになれる」という逸話がありましたが、

今は「あんな何百手もある問題を解くのは時間の無駄だ」そう言われるようになりました。

詰将棋は総合的な終盤力の強化になるので、

確かに大事なのですが現代将棋は序盤が命です。

そもそも終盤にならずに負けてしまっては元も子もないですよね。

なので次の勉強法は奨励会員にとって非常に大切なんです。

序盤研究

 

奨励会員はどの戦型の定跡もすべて知っています。

ただ、それは全奨励会員に言えることで、

いわば定跡を知っているのは当たり前なんです。

 

この形はこう進んだら良い、悪いがすべてわかっています。

となると、悪いとされている結論が目前にある場合、

どこかで打開しなければいけません。

 

いかに序盤で差をつけられないようにするか。逆に差をつけてやるか。

そのために、棋士同様に奨励会員も新しい手を日々、研究し続けています。

時には奨励会員の研究手順を棋士が使う、なんてことも起こります。

 

序盤研究は基本的に一人で行います。

将棋界は周り全員がライバルなので研究を共有することはないですね。

一人で行う際は将棋ソフトを使う方もいます。

 

ただ、ここで勘違いしないでほしいのが、

将棋ソフトは最善を示してくれるわけではない、ということです。

あくまで候補手を出すだけ。

将棋ソフトの最善手と呼ばれるものは

ソフト同士の対局であった場合にのみ有効です。

先ほども言いましたが、

人間同士の対局では勝つために時には悪手も指さなければいけないんです。

・・・とまた話が逸れてしまいましたね(笑)

 

将棋ソフトを使った序盤研究をするときは

ソフトの示す候補手と自分の思う最善手をよく吟味しながら

自分なりの研究形を作っていきます。

こうして序盤にいくつものハメ手を用意するんです。

今や、序盤研究をしない奨励会員はいないでしょうね。

 

精神統一

 

精神統一なんて考え方が古い、そう思う方もいるかもしれません。

ですが、将棋ではこの精神統一が実は一番大切なのです。

奨励会の実情について語りだすときりがないので簡潔に言いますが、

「奨励会はどんな天才でも気の弱い奴はすぐに去る」ということなんです。

 

私は奨励会に入り天才集団に囲まれ、すぐに自分の才能のなさに気づきました。

それでも将棋界に居続けたい、その思いだけで今もなんとか奨励会に居ることができています。

そうしているうちに周りの天才集団は奨励会を次々に去っていきました。

理由は単純です。メンタルが弱かったからです。

ある者は将棋を見ただけで吐き気に襲われたり、ある者は将棋に飽きて遊びにハマったり…

 

奨励会員はそうなるのを恐れています。

なので負けても心が折れないように、心が病んで指し手の質が落ちないように、

セルフコントロールをしっかりしています。

中には定期的にカウンセリングを受けに行って心のメンテナンスをする方もいます。

 

案外、精神統一もバカにできないものなんですよ!

私も精神的苦痛をうまく緩和できるよう、

相談できる友達を作ったり、没頭できる趣味を作ったりと色々と努力しています。

 

一日の勉強量は?

 

これはですね、本当にバラバラです(^^;

 

一日8時間以上している方もいれば、

奨励会でしか将棋をやらない、なんて人も(笑)

将棋は学校の勉強と違って、やらなくてもそこまで弱くはならないんです。

わかりやすい例でいうと、自転車ですね。

一回乗れるようになれば、数ヶ月乗らなくてもまた乗れますよね。

そういう感覚です。

 

私の体感で言うと、8時間以上勉強しているのは30%、

5時間程度が10%、1~3時間が40%、数日に一回が20%ですね。

ちなみに今の私は10%のうちに入ります。

 

悔しいことに勉強していない人ほど勝っていたりするんですよね…

例えば、元タイトルホルダーの某先生は奨励会時代、

麻雀にどっぷりハマっていたにもかかわらず抜群に強かったとか。

 

逆に勉強しすぎている人は煮詰まって勝てないという症状に陥りがちです。

でも勉強したことは脳内にしっかりと蓄積されていくものなので

勉強するに越したことはないですけどね。

 

まとめ

 

  • 対局は研究会で。『感覚を磨く』
  • 『記録係』や『モバイル中継』で棋譜並べ
  • 詰将棋は『詰将棋パラダイス』と『詰将棋サロン』
  • 序盤で差をつけるため、徹底した定跡勉強
  • 奨励会で生き続けるために精神統一

 

最近は奨励会試験もかなり緩くなり、習い事感覚で入ろうとする方も増えました。

しかし、そういう中途半端な意志だとすぐに挫折を味わうことになります。

奨励会にいてもプロになれるのは100人中1~3人。

周りは小学生の時から全国優勝など輝かしい功績を残すような人だらけ。

 

私の友人にも習い事の一環で奇跡的に入れた人がいましたが、

その人は2回の降級を経験し、通算成績も2割ほどで去りました。

「奨励会なんて入らなければ良かった」

友人もそうですが、奨励会に入った人が一度はつぶやく言葉です。

 

決してこれから奨励会に入ろうとしている子たちを脅しているわけではありません。

これが実情なんです。

なので奨励会に入るからには中途半端な覚悟でやってほしくないです。

 

先日、私の大切な友人が奨励会を去りました。

小学生のころから互いに切磋琢磨してきた仲で何千局指してきました。

彼は才能はありましたが、もともとメンタルが弱く、

10代の半分以上が挫折の日々でした。

それでも彼は「挫折、後悔だらけだったけど楽しかった」と

奨励会を笑顔で去っていったんです。

もう奨励会で会えないんだと思うと悲しみが止まりません。

 

私がブログを始めた理由は、

私や彼のように悲しい思いをする人間を一人でも減らしたいからです。

プロを目指すなら本気で。

私もこのブログを書いているとき以外はほとんどの時間を将棋に費やしています。

 

もし、この記事を読んでくださっている方の中に

プロを目指そうと思う方がいるのなら、

上に書いたことを十分に意識して勉強するようにしてください。

 

途轍もなく厳しい道のりですが、頑張っていれば報われますよ!

応援しています。

 

以上、奨励会員の勉強法でした!

 

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