一昔は5局に1局くらい指されていた横歩取り。

先手後手どちらを持っても互角とされていました。

横歩取りで多くの名局が生まれ、タイトル戦の大勝負でも採用されていた戦法です。

アマチュアにも人気で、

中座飛車、中原囲い、富岡流など一度は聞いたことあると思います。

 

ですが最近はどうでしょう?

公式戦でも15~20局に1局になり、

先手の方が勝ちやすい戦法になりました。

 

謎の多い横歩取り。

今回は中座飛車出現から現在に至った経緯を含め、

横歩取り激減の理由について詳しく解説していこうと思います。

 

 

△8五飛戦法衰退の流れ

 

まず△8五飛戦法をご存知でしょうか?

この局面です。

 

 

中座飛車とも呼ばれていますね。

1997年に初登場した形で、

従来はこの形を基本に研究がなされてきました。

先手は中住まいにするか、ひねり飛車にするか、

後手は中住まいにするか、中原囲いにするか。

様々な組み合わせがあってどれも終盤戦まで研究されていました。

 

 

ですがこの△8五飛戦法は猛威を振るい続けます。

普通は飛車が高いところにいると当たりが強くなって良くないのですが、

この8五飛は具体的に咎める手がないんです。

 

そこで山崎流、新山崎流の二つが現れることになります。

 

山崎流

 

 

新山崎流

 

 

2筋3筋から強襲を食らわせるこの2つの作戦が

なかなかに有力で後手横歩取りにピンチが訪れます。

 

しかしそこで現れたのが、△5二玉型中原囲い。

松尾八段が開発したため松尾流と呼ばれています。

 

 

松尾流

 

 

△4一よりも△5二の方が2筋3筋の攻めを緩和できる

ということで再び後手横歩は流行り始めます。

松尾流の特徴はもう一つあって、それは△2三銀と上がること。

これにより▲3三角成△同桂の時に▲2一角の攻めを防いだり、

場合によっては△3四銀から先手の飛車を押さえこむこともできます。

これが2010年頃。

 

さて今度は先手がピンチ。でも解決策はすぐに見つかります。

 

先手中原囲い

 

 

後手と同じ形を作ってしまえば、

一歩得している先手が良くなるのではないということで

この先手中原囲いが流行り始めることになります。

 

これが非常に優れた戦法で固いのはもちろんそうですが、

後手から角交換がしづらい(▲同桂の時に飛車に当たる)ので

先手は攻められることがなく、好きな形に組めます。

 

こういう経緯があり、

後手はやはり「△8五に飛車を引くべきではない」という結論に至ったのです。

 

 

△8四飛型が復活

 

もともと△8四飛型は昔からありました。

ただ、中原囲いと組み合わせた△8四飛型が斬新で、

また一から研究され直すことになります。

 

△8四飛型

 

ですが先手中原囲いは優秀すぎました。

後手は色々と研究をして角交換から必死に攻めるのですが、

先手玉の固さ故に受けかわされてしまいます。

 

後手は△8四飛型で何か新しい形が求められます。

これが2013年頃。

 

最新形△7二銀型

 

△7二銀型

 

これが▲3六飛型に対する最新形。

 

△7二銀型はある狙いを持っています。

先手が呑気に先手中原囲いに組んでいると、

△2三銀~△2四飛から飛車交換を挑まれて、

陣形の低い後手の方が指しやすくなるんですよね。

 

そのため、先手は再び中住まいに戻して戦うことになります。

するとこの局面。

 

 

この形が大流行したんですよ。

私も多くの奨励会員と詰みまで研究したのを覚えています。

この先の進行としては、

 

▲同飛(1)△同銀▲8四飛△7四歩(2)▲8二飛成

△8八角成▲同銀△5五角▲4六角△同角▲同歩

△5五角(3)▲8五竜△8八角成▲同金△7九飛▲5九銀△7八銀(第1図)

 

(1)▲2五歩は加藤(一二三)流と呼ばれ、

一時期流行るもその後の△7四飛が難敵で先手不利。

 

(2)△8三歩は▲2四飛△同角▲1一角成。

多くの実戦例があるが、結論は先手優勢。

 

(3)△1四角の定跡もある、

 

第1図

 

 

後手は△角を切って猛攻撃。細い攻めですがなかなかにうるさいです。

そこで先手は▲8四飛と打つ局面で▲8六歩(第2図)という好手を見つけます。

 

第2図

 

 

狙いは単純で▲8六歩から▲8五▲8四▲8三歩成と進めること。

△同銀には▲8二歩。歩だけの攻めで攻略できてしまうのです。

 

▲8六歩に対し後手は、

 

△8八角成▲同銀△3三銀▲8五歩△4四角(第3図)とします。

 

第3図

 

 

ここで先手はずっと▲6六歩△同角に

▲8四歩or▲6四歩から攻め合っていましたが、

どうも先手の方が勝ちづらい。

 

この時、奨励会員の間では密かに

▲8六飛(第4図)

 

第4図

 

 

が研究されていました。

これならこれ以上後手の攻めはなく、

且つ▲8四歩からの確実な攻めがあるので先手有望

それはおそらく棋士の先生方も研究されていたと思います。

結局それ以来、公式戦でこの形は現れなくなりました。

 

△7二銀型の改良案 斎藤流

 

これが現在、最善とされている形で、

とうとう先手は受けがなくなりました。

決定版です。

 

斎藤流

 

端を突いて手待ちするのがポイントですね。

先手は▲3六歩と突きますが、その瞬間に△8六歩。

 

▲同歩△同飛▲3五歩に△8八飛成▲同銀△5五角打(第1図)

斎藤流は飛車切りを狙っていました。

 

第1図

 

先手はここから二択です。▲7七桂か▲8三歩。

▲7七桂は△8七歩▲同金(1)△1九角成▲3七桂

△1八馬▲2七金△2五歩(2)▲同桂△4四角(第2図)で先手不利。

 

(1)▲同銀、▲7九銀もあるが変化が長手数なので省略。どちらも先手自信なし。

 

(2)単に△4四角は▲4五桂で後手自信なし。

 

第2図

 

 

▲7七桂に代えて、▲8三歩は

△8八角成▲同金△同角成▲8二歩成

△2五歩▲5六飛(1)△8九馬(2)▲7二と

△6九銀▲同玉(3)△6七馬▲6二飛(第3図)

 

(1)▲3六飛は△9九馬▲8四歩△4五銀で先手自信なし。

 

(2)△9九馬もかなり有力。

 

(3)▲4九玉ならまだ難解ではあるものの、先手が勝ちづらい。

 

第3図

 

先手はもう受けがないので詰ましに行きますが、

この時△1五歩型であればぎりぎり詰みません。

端は端でも△9五歩型だと▲6二飛以下詰みです。

 

これはあくまでも一例ですが後手有望の変化が至る所にあります。

▲3六歩に代えて▲7七角~▲6八銀と持久戦にすれば

△6二玉~△7一玉と美濃囲いにして後手作戦勝ち。

この時、△9五歩型の方が良いので端の兼ね合いは難しいですが、先手苦戦には間違いないです。

ここまでのまとめ

△8五飛戦法大流行

山崎流、新山崎流の登場

松尾流△5二玉の革命

先手中原囲いで先手作戦勝ち

△8四飛型の復活

最新形△7二銀型の登場

飛車交換後の▲8六飛で先手良し

現代の最善形 斎藤流

△1五歩型、△9五歩型 難解ながらも後手良し

横歩取りの大革命 青野流

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