振り飛車を指す棋士は以前に比べて少なくなりました。

しかし近年、形にこだわらない独特な振り飛車が多く誕生し、

振り飛車ブームは今再燃しようとしています。

 

振り飛車の天敵といえば居飛車穴熊ですが、

その穴熊を一網打尽にしてしまう振り飛車が多く開発されました。

今回はここ数年で現れた現代振り飛車についてご紹介していこうと思います!

どの形も実際に公式戦で指されたことのあるものなのでご安心ください!

この記事は5級~四段向けです。

 



下町流三間飛車

 

下町流三間飛車は小倉久史七段によって命名された戦法です。

昔からあった戦法ですが、最近になって再び指されるようになりました。

戦法の趣旨は居飛車穴熊を壊滅させることです。

 

それではどういう形なのかを見ていきましょう!

下町流三間飛車にはいくつか形があって

今回はその中でも特に有名で且つ破壊力のあるものをご紹介します。

 

基本図

 

まず基本図。

一見、何の変哲もない三間飛車ですが、ここから下町流が姿を現しますよ!

 

△1二香▲7五歩△5四歩▲5六銀

△5五歩▲4五銀△8四飛▲5八飛(第1図)

 

第1図

 

下町流三間飛車の特徴その一

「早めの▲4五銀で△3四歩を取りに行く」

▲4五銀を防ごうと△4四歩と指すのは

▲4六歩~▲4八飛から右四間飛車のように指して作戦勝ちです。

 

下町流三間飛車の特徴その二

「▲5八飛から中央突破」

▲4五銀だけでは攻め味が薄いので飛車を攻めに参加させていきます。

 

第1図から

△1一玉▲5六歩△同歩▲同飛

△8六歩▲同歩△8八歩▲5四歩(第2図)

 

第2図

 

後手の△8六歩~△8八歩は機敏な一手で▲同角なら△8六飛です。

普通はこのような手を食らってはまずいのですが、この場合は後手が歩切れなので

最後▲5四歩と垂らしたときに△5二歩と受ける1歩がありません。

さらに飛車の横利きが止まったので▲3四銀と指せるようにもなっています。

第2図から後手は△4二角と受けますが、

▲6五歩がピッタリの一手で先手優勢です。

 



トマホーク

 

トマホークは小倉七段の弟子、山本博志四段によって開発された穴熊撃破定跡です。

山本四段は三段時代にこの形を用い、かの有名な藤井聡太七段(当時三段)を倒しました!

一時期、5筋不突き穴熊に振り飛車側は頭を悩ませていましたが、

このトマホークの登場により現在は5筋不突き穴熊が消滅しつつあります。

それではどんな戦法なのか、早速見ていきましょう!

 

まず駒組から気を付けてください。

  • 玉は▲4八
  • 早くに端の位を取る
  • 三間飛車

 

この三つが成立していないとトマホークができません。

 

基本図

 

まずは下町流三間飛車のように▲5六銀と出て△3四歩を狙いに行きます。

▲5六銀以下、

△2二銀▲4五銀△8四飛▲1七桂!(第1図)

 

第1図

 

この▲1七桂がトマホークならではの一手です!

次に何が何でも▲2五桂と跳ねて端攻めを狙います。

 

これに対し、△2四歩なら▲2六歩で次の▲2五歩が厳しく先手良し。

△1五角と端歩を取るのも▲2五桂~▲6五歩で、

むしろ端が素通しになるので威力が増します。

 

第1図以下、

△3二金▲2五桂△2四角▲6五歩

△5一金▲5八金左(第2図)△4一金▲6六角

△9四飛▲9六歩△3一金寄▲9五歩△7四飛▲7五歩△8四飛(第3図)

 

第2図

 

第3図

 

トマホークはどうしても玉側で戦いが起こりがちです。

そうなると必然的に飛車が遊び駒になってしまうので、

飛車交換を目指していきます。

 

実はこれがトマホークのポイントの一つで、

飛車交換をして攻め駒として使えば威力が倍増します。

 

第3図以下、

▲1三桂成△同角▲1四歩△2四角

▲1三歩成△同香▲1四歩△同香▲同香△1三歩(第4図)

▲7四歩△同飛▲同飛△同歩▲2六香(第5図)

 

第4図

 

第5図

 

第5図まで進み、先手が優勢ですね。

▲2六香に対し、角を引けば、▲1三香成~▲1四歩が厳しく、

さらに▲3四銀の応援もあります。

 

穴熊に組めたから勝ち、というわけではことを証明した戦法になりました。

四間飛車ミレニアム

 

ミレニアムと言えば、以前は振り飛車に対しての囲いでした。

非常に優秀な戦法で、最近また公式戦で指されることが増えました。

 

「じゃあ居飛車側のミレニアムを振り飛車がやったらどうなるのか…」

その発想で生まれた四間飛車ミレニアム。

これもまたまた居飛車穴熊と相性の良い戦法で、

近年少しずつではありますが指す棋士が増えています。

まず、四間飛車ミレニアムの組み方から見ていきましょう!

 

基本図

 

ここまでは従来の振り飛車と同じです。

ここから▲4六歩、▲3六歩、▲3七桂、▲2八銀、

▲2九玉、▲3九金、▲4八金寄と組んで完成です。

 

▲3八金寄は指す場合と省略する場合があります。

意外と手数がかかるなーと思うかもしれませんが、実は高美濃囲いと同じ手数です!

それでは高美濃とどう違いが出てくるのか、確かめてみましょう!

 

第1図

 

第1図はお互いに囲い終わったところです。

ここで居飛車側は従来の定跡通り△5一角と引くと、

いきなり▲4五歩の仕掛けが発生します。

△同歩は▲同桂△4四銀▲6四歩から飛車先突破。

 

普通の高美濃だと△7三角が王手になってしまいますが、

ミレニアムなら玉が一段目なのでその心配がありません!

 

▲4五歩に△7三角と指しますが、

▲6四歩△同歩(1)▲7五歩△8四飛(2)▲3八金寄と進みます。

 

(1)△同角は▲6五銀で振りぺ(振り飛車ペースの略)

(2)△8四飛に代えて△同歩は▲7四歩で同じく振りぺ

 

最後の▲3八金寄がベストタイミングの寄りで、

ここから振り飛車の厳しい攻めが続きます。

 

△7五歩▲4四歩△同銀▲4八飛(第2図)

 

第2図

 

次に▲4四角からの二枚換えを狙っていますが、

これが意外に受けにくいのです!

居飛車側の飛車と角をそっぽに行かせているのも大きいですね。

ここまで進めば完全に振り飛車優勢です!

所々に出てきた振り飛車の手筋も一緒に覚えてくださいね。

 

 

△3三金型三間飛車

 

これは王位戦第5局、▲羽生善治三冠VS△菅井竜也七段(現八段)戦で菅井七段が披露し、

実際に勝って王位を奪取したことで一時期話題となった戦法です。

△3三金型三間飛車とはどのような戦法なのか、

まず初手から見ていきましょう!

 

▲7六歩△3四歩▲2六歩△3二金▲2五歩

△3三角▲同角成△同金▲6八玉△3二飛!(第1図)

 

第1図

 

昔からある坂田流向かい飛車にするなら

△2二飛と回るべきところですが、△3三金型三間飛車は△3二飛と回ります。

 

第1図以下、

▲7八玉△6二玉▲8八銀△7二玉▲7七銀

△3五歩▲7五歩△4二銀▲4八銀△5四歩(途中図)

 

▲5六歩△5三銀▲5七銀△8二玉▲6八金

△7二銀▲9六歩△9四歩▲6六歩△3四金(第2図)

 

途中図

 

第2図

 

 

かなり斬新な組み方ですよね((笑)

後手の形はとてもきれいとは言い難いですが、

これを居飛車側が咎めるのも難しいです。

 

△3三金型三間飛車の良いところは

  • 金で隙なく守っているので居飛車側から攻められる心配がない
  • 早めの△3五歩で居飛車の右銀や右桂の活用を妨げている

ところですね。

 

居飛車は急戦にも持久戦にも持ち込みづらく、序盤に苦労する展開になるでしょう。

しかしそれは振り飛車側にも言えることで、

自陣に角を打たれる可能性がいつでもあるので神経を使う将棋になるでしょう。

ただ、振り飛車の方が指し手の方針はわかりやすいです。

序盤力に自信のある方にはおすすめの戦法です!

 

一間飛車

 

一間飛車は2020年3月25日に阿久津主税八段によって初めて指されました。

序盤で阿久津八段に誤算があったらしく、

快勝とはいきませんでしたが最後は勝っています。

今後、広まる可能性があるので見ていきましょう!

 

初手から、

▲5六歩△3四歩▲5八飛△4二銀▲5五歩△4四歩▲7六歩

△4三銀▲3八銀△1四歩▲1六歩△3三角▲4六歩△1五歩!

▲同歩△同香▲1七歩△1二飛!(第1図)

 

第1図

 

まず早い段階で1筋を突きます。

この地点ではまだ後手が居飛車か振り飛車かの姿勢を見せていないので、

もし先手が1筋を受けなければ△1五歩~△4二玉と居飛車にしてやや後手良しです。

 

先手は端を受けるよりありませんが、△3三角からすかさず歩交換。

△同香に交換するのは後の△1八歩が厳しく後手良し。

致し方なしの▲1七歩に△1二飛で一間飛車の完成です!

 

次は△2四角と上がり、そこから△1七香成と突進していきます。

▲同香は△1六歩で後手良し。▲同桂も△1六歩▲2五桂△1七歩成で後手良し。

▲2五桂のときに角取りにならないのが△2四角の効果です。

 

ただ一つ気を付けなければいけないのが、

▲2六歩~▲2七銀と▲2八銀の筋です。

 

どちちを食らっても次に▲1六歩から香車が取られてしまうので、

初手から端攻めのタイミングを計算しなければ失敗してしまいます。

 

これは相手が中飛車だったパターンですが、

三間飛車や向かい飛車でも応用できる戦法だと思います。

 

まだまだ研究課題が多く残る形ですが、

新たな可能性を示した阿久津八段に敬意を表して

「阿久津流一間飛車」

と命名したいと思います!

 

まとめ

 

  • 5筋不突き穴熊には下町流三間飛車orトマホークで撃破
  • 四間飛車ミレニアムはノーマル穴熊の際に有効
  • 序盤力に自信のある方は△3三金型三間飛車で居飛車陣を封じ込む
  • 一間飛車は研究を積んで指せば有力な戦法

 

私は居飛車党ですが、

この現代振り飛車を見て自分も指したいなと思い、

最近は振り飛車を指すことも多くなりました。

この記事をきっかけに振り飛車を指す方が増えればと思います。

 

以上、現代振り飛車の紹介でした!

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